夏日にヒートテックで登校した息子と、ずっと向き合えなかったわたしの話

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5月の夏日に、息子はヒートテックの長袖を着て登校しました。

夏用の半袖下着を用意したのですが、丈が短いから嫌だというのです。半袖なら丈が短いのは当たり前ですし、今日は暑いよと言っても聞きません。結局、冬用の長袖インナーのまま出かけていきました。

怒鳴りたい気持ちをこらえながら、「また」と思いました。

こういうことが、ずっと続いています。

積み重なってきたもの

息子は昔から服と靴へのこだわりが強いです。締め付けが嫌い、肌触りが嫌い、着丈が嫌い。わたしが選んだものはだめ、自分で選んでもやっぱりだめということも多くて、着ない服や履かない靴がこれまでたくさんありました。

靴はサイズが絶対大きいはずなのに、足のどこかが当たるからと履きません。どこが当たるのか聞いても、うまく説明できないのです。

お気に入りのフリースの袖口を、いつもずっと撫でています。同じ場所を擦り続けるから、そこだけゴワゴワになってしまいました。本人は気にしていないようですが、不安を落ち着かせようとしているのかもしれません。

こういうことが「普通と違うかも」と思い始めたのは、息子がまだ小学校低学年の頃でした。

「男の子だから」という言葉

でも周りに話すと、決まって同じ答えが返ってきました。

「男の子ってそういうもんだよ」「小さいうちはみんなそんな感じ」「幼いだけ、そのうち落ち着く」

そうなのかな。でも。と思いながら、蓋をしました。

小学校3年生か4年生のとき、心配でスクールカウンセラーに授業の様子を見てもらったことがあります。「問題なし」と言われました。そうなのか、と思いながら、それでも引っかかりは消えませんでした。

高学年になってから、学童の先生に「他の男の子たちは落ち着いてきたのに、息子くんは変わらないから少し気になっている」と言われたこともあります。

その時点で動けばよかったと、今なら思います。でも当時はフルタイムで働いていて、「時間がない」という言い訳で先送りにしました。本当は、向き合うのが怖かっただけかもしれません。

数年前、思い切って息子に「もしかしたら脳の特性があるのかもしれない。検査してみる?」と聞いたことがあります。嫌だ、と言われました。そのまま、また話題にできなくなってしまいました。

教室のイメージ

そもそも「触覚過敏」って何?

服や靴へのこだわりが強い子について調べていくと、「触覚過敏」という言葉が出てきます。

感覚処理の問題で、普通の人には気にならない刺激が、本人には強烈な不快感として伝わる状態のこと。服の素材、締め付け、タグ、丈へのこだわりは、発達グレー・ASD(自閉スペクトラム)・ADHD傾向の子に非常によく見られる特性とされています。

嫌がらせでも、わがままでも、気まぐれでもありません。本人には物理的に不快で、どうしても無理という感覚なのです。

もしそうなら——「なんで着てくれないの」と怒り続けてきたのは、的外れだったのかもしれないと思いました。

こんな特性、当てはまりませんか

触覚過敏のほかにも、こんなことが当てはまる場合、発達の特性が関係しているかもしれません。

  • 好きなことへの過集中(何時間でも没頭できる)
  • 興味がないことはまったく頭に入らない(聞いているようで聞いていない)
  • 冗談・比喩・行間が伝わりにくい(言葉をそのまま受け取る)
  • 気持ちの切り替えが苦手(遊びの途中でやめさせると荒れる)
  • 特定のものへの強い愛着(捨てられない、同じものを繰り返す)
  • 音・光・においなど他の感覚過敏(給食の匂いが無理、体育館の音響が辛い等)
  • 友達は少数精鋭(広く浅くより狭く深く、または一匹狼)
  • 英語・国語など読み書きが特に苦手

息子には、いくつか当てはまることがあります。

「本人は困っていない」は本当か

困っていないんじゃなくて、それが自分の”普通”だから気づいていないのかもしれないと知りました。

服が嫌で着られないのも、話が頭に入らないのも、本人にとってはずっとそういうものとして生きてきたから。もしかしたら「自分はダメなやつ」「努力が足りない」と思いながら。

思春期以降、人間関係や学習が複雑になってから一気に困り感が出てくることも多いといいます。そう考えると、のんびりしていられないかもしれません。

認めることへの怖さ

「そうかもしれない」と動こうとすると、もう一つの気持ちが出てきます。

やっぱりそうなんだ、と認めることへの怖さ。人と違う、ということへの怖さ。中2になった息子に伝えたとして、受け入れられるのだろうかという不安も正直あります。

でも考えてみれば、息子はずっと息子です。名前がついても、つかなくても、変わりません。むしろ「わがままじゃなく、感覚の問題だったんだ」とわかれば、毎朝の喧嘩が少し変わるかもしれない。「自分はダメなやつじゃなかったんだ」と息子自身が楽になれるかもしれない。それでも、なかなか動けないのが現実です。

もし動くなら、どこに相談すればいいか

かかりつけ医がなくても相談できる窓口があります。

相談先特徴
発達障害者支援センター各都道府県にある。無料。親だけで相談できる
学校のスクールカウンセラー担任を通さず親だけで相談できる
児童精神科・思春期外来中高生も診てもらえる。発達検査が受けられる

診断がつくことで得られるもの:

  • 「この子はこういう特性がある」と親が腑に落ちる
  • 本人も「自分がおかしいんじゃなく、脳の特性なんだ」と楽になれる
  • 服や靴の喧嘩も「わがままじゃなく感覚の問題だった」と関係が変わる
  • 高校受験や進学で配慮申請できる場合もある(試験時間の延長など)

中2からでも遅くありません。大人になってから初めて診断を受ける人も多いです。

散歩の帰り道

朝の喧嘩が気まずいまま終わるのが嫌で、帰宅した息子を誘って一緒に犬の散歩に行きました。

ゲームの話、学校のたわいない話。それを聞きながら歩いて、田んぼに映る夕日を二人で見ました。

この時間が、とても大切です。

何が息子にとっての幸せなのか、まだわかりません。うまく向き合えてこなかった後悔もあります。でも、この子のそばにいたいとは思っています。

まだ、迷っています。でも、蓋をして見て見ぬふりはやめようと思っています。

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